Iターンして高齢者介護に貢献

yamamoto-main 山本富也さん (37)

▼ 生い立ち、そして上関へ

職場がある蒲井地区(長島)

職場がある蒲井地区(長島)

山本さんは下松市に生まれ育ちました。そして、高校卒業時に「就職する前に何か勉強してみては」という助言を得て、興味を持っていた福祉の専門学校(山口県内)へ進学しました。 さて、就職活動をしていたとき、現在も勤務する施設(上関町高齢者保健福祉施設)の求人票に目がとまりました。高齢者介護に特別な関心があったわけではありません。そこに書いてあった「Iターンの人、歓迎」という言葉に惹かれたそうです。 「上関に住んでもいいかなと思ったんです。食事に来たこともあっていいイメージを持っていました」と山本さん。オートバイが好きな山本さんは、上関の海岸沿いの道を走っての買物や通勤もまた、楽しみだなと感じたそうです。 ところが、実際に採用となり、職場に案内されて驚きました。山本さんが知っていた上関町は役場等がある長島の東側まで。案内されたのは、役場からさらに車で細い道(現在は広い道が整備されています)を走った先、長島の西側にある蒲井地区でした。「こんなところがあるのか」と、海沿いの小さな集落を見て驚いたそうです。1999年の春のことでした。

▼ 働いてみて

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山本さんが勤務する上関町高齢者保健福祉施設

最初の職場は特別養護老人ホーム・かみのせき苑でヘルパーとして働きました。そして徐々にその魅力や奥深さに惹かれていったと言います。 例えば、高齢者が入所するときには、介護に必要な様々な情報を携えて来ます。ある人の場合、認知症を患い、時には乱暴な振る舞いをすることもあると書かれ、前の施設では看ることができなくなったとも・・・。しかし、丁寧にお話しを聞き、高い地位にあったこの方への尊敬を態度で示すと、落ち着いた本来の姿を取り戻したといいます。 「いい上司に恵まれたんです。情報を鵜呑みにするんじゃなくて、入所者さんと一緒に過ごして自分の目で観察して判断することの大切さを、教えてもらいました」。 さらに、山本さんは不思議な体験をします。ある入所者さんの奥さんが亡くなったときのこと。奥さんは熱心に施設に通い夫のお世話をしていた方。夫は認知症を患っていたが、せめて霊柩車が施設の前を通るときに、最後の別れをさせてあげたい。山本さんたちは、霊柩車が通りかかる時間に合わせて、入所者さんに喪服を着せるなどの準備を始めました。ところが、予定よりも30分も早く、準備は完了。なんとなく早めに外に出てみると、霊柩車がやってきたのです。 「たまたま、早く外に出なかったら、最後の別れはできなかったんです。不思議な気持ちになりました」。仕事を通じて、このような体験はたくさんあるのだとか。 現在、山本さんはヘルパーの現場から離れて、居宅介護のケアマネージャーをしています。医療現場とも連携しながら、急速に進む過疎と高齢化の問題に日々取り組んでいます。

▼ 暮らしてみて

山本さんの住まいは上関町役場の近く、町営住宅です。学生時代に知り合った柳井市出身の妻と3人の子ども(小学生と中学生)という賑やかな家庭。住み始めて16年になり、すっかり上関町に根を張っているように思えます。しかし、「まだまだ、これからです」と、意外な答えが返ってきました。 近所の人たちは最初から、町外からやってきた山本さん夫妻にとても優しく、気を使ってくれたとか。しかし、本当に地域の中に溶け込めたと感じたのは、7年前のことだったそうです。 「消防団に誘ってもらったんです。それまでは職場中心の人間関係でした」。消防団ではそれまでに出会ったことのない人たちと触れ合いました。地域の祭りの手伝いにも呼ばれるようになり、お酒の席にもたびたび。そんなとき、酒の席でちょっとした事件が起きます。 「思ったことをそのまま意見したんです。まだ表面的なことしか見えてないのに、勝手なことを言ってしまいました」。翌日には謝って周る山本さんの姿がありました。人々は山本さんのことを許すと、相変わらずの付き合いが続いています。 「よそ者、若者、ばか者と、地域活性化にはそんな人が必要だといいますが、それは地域のことを理解して、信頼を築いてからの話だと思います。それを間違えると、迷惑な人になってしまいます」。 現在、山本さんは地域の仲間から、「とみや」と名前で呼ばれる存在。これからもっと深い絆が生まれることでしょう。 柳井市出身の奥さんは子ども達を介して、一歩先に地域に溶け込んでいるそうです。「妻の方が地域の信頼は厚いかもしれませんね」と山本さんは笑います。

▼ これからも上関町で

秋祭りで活躍する山本さん

秋祭りで活躍する山本さん

仕事面では、難しい問題に直面しています。人口3千で高齢化率も高い。地域には空き家が目立ち、ご近所だけで暮らしを支えることは難しくなっています。 「介護だけでなく、地域にある教室、ボランティア、医療などが全て線で繋がって、町全体で支える必要があります。個人だけを見て仕事をしていたのでは、立ち行きませんから」。 そして、共に地域を支える若い人材のUJIターンを熱望しています。 「都会にいると個人は埋没してしまいます。でも、ここなら、若くてがんばる人ならすぐに活躍できます。注目されて、名前で呼ばれて、それが固有名詞になるんです」。 山本さんは今、生涯にわたり上関町に住みたいと考えています。そして、町へ移住してくる将来の仲間に出会えることを待ち望んでいます。 (取材/2015年11月)

お問い合わせ

企画財政課 企画調整係
電話 0820-62-0316  FAX 0820-62-1600

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